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達磨はなぜ、丸いの?

どうして、丸い形をしているのかといいますと、ダルマ人形の形そのもののルーツが、倒れてもすぐに起き上がる「起き上がり小法師(こぼし)」にあるためだと考えられます。起き上がり小法師の起源は中国の「不倒翁(ふとうおう)「酒胡子(しゅこし)」と遡(さかのぼ)ることができるといわれています。酒胡子は尻の尖った木の人形で、酒の席の卓上でこまのように回し、倒れた方向に坐っていた人が酒を飲むという玩具です。この酒胡子が倒れないようにと変形されたのが、明代後期(1570年代)に紙の張り子で作られたといわれている不倒翁です。当時の不倒翁は”翁”であって、達磨大師とは関係がなく、粘土で重心を下におき、起き上がることを第一としていました。

この不倒翁が日本に入ってきたのは室町時代末期だといわれ、さらに国内では起き上がり小法師と和名となり、独自の進化をとげていきます。小法師とは「小僧」の意味ではなく、わが子を卑下して言う言葉です。その起き上がり小法師から張子や木、土などでできた「起き上がりだるま」が誕生していきます。時代については不明なのですが、だいたい江戸中期から末にかけて、起き上がりだるまが制作されるようになったといわれています。また、宗教色のあるものとしては七福神なども作られます。

丸い形は、七転び八起きといわれるように「どんなに転んでも、必ず起き上がる不到不屈の心」を表わしています。この不屈心は面壁九年の達磨大師の精神と重ねられているのですが、まろやかな心、穏やかで円満な悟の境地といった大師の人間性も象徴しています。

ダルマは全国各地にありますが、「張り子の縁起だるま」は群馬県高崎市にある達磨寺(だるまじ)が発祥の地です。今から約二百年ほど前の天明三年、浅間山の大噴火があり、天変地異のため大飢饉(だいききん)となってしまいます。この惨状を見かねた当時の住職、東嶽和尚(とうがくおしょう)が開山・心越和尚(しんえつおしょう)の書いた「一筆だるまのお札」を手本に木型を作り、張り子だるまの作り方を農家の副業として伝授し、正月の七草大祭で販売しました。

最初はー筆だるまに似た「坐禅だるま」、つまり、坐禅をしているような形だったのですが、しだいにやや細長い繭型(まゆがた)とろり、さらに現在の丸型と変化していきます。

ダルマの丸い形は起き上がり小法師の持つ丸みが原型だと考えられますが、達磨寺の縁起だるまのように、独自の発生、発展をしていったものもあるようです。

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参考 大法輪 「だるまさん」 なぜなぜ問答(村越英裕)